フェイレンとシーナの二人がトゥエンを追い走り去っていく背を見送り、ルックは小さく溜め息を吐いた。
(くだらない)
心の中で呟く。
くだらない──どれも、これも。
戦時中にも関わらず、毎日楽しそうに笑っている軍主も。
お祭り気分でそれを煽るどこぞの放蕩息子も。
戦いを嫌っているのに、苦しむと解りながら自ら戦いに関わる『元』軍主も──。
下らない。
鬱陶しい。
面倒臭い。
師の命でもあるし、星に定められた『天間星』としての役目がある。
関わり合いになりたくなくても関わらざるえない。
自ら望んだワケではないが、関わらねばならない今。
こんなものを定めた『運命』に、憤る。
何より──。
そんな毎日を悪くないと思う自分がいる。
「…くだらない」
呟きが、今度は声になった。
もう一度、溜め息。
瞑想の為に頭を軽く振り雑念を払う。
周囲を遮断しようと目を閉じた、瞬間。
──どんっ!
「!?」
背に衝撃。耐えきれず、無様に転倒する。
自身に掛かる重みに、誰かに押さえつけられていると認識する。
トゥエンが戻ってきたのか、そう思った瞬間。
「悪い! 借りる!!」
聞き覚えのある声──確かサスケとか言う、自分とそう変わらぬ年頃の少年忍者。
声と同時に額からサークレットが抜き取られ、重みが消える。
ルックの視界には、走り去ろうとするサスケの背中が見えた。
――ぷちっ。
ルックの中で何かが切れた。
「──我が身に宿りし真なる風の紋章よ!!!!!」
瞬間、ルックは迷わず右手を掲げ魔力を解き放った。
.