日課である船内の見回りの途中。
とても珍しいものが視界に入り、僕は思わず足を止めた。
「…テッド?」
ぽつりと漏れた呟きに、視界の先で少年――テッドがびくりと肩を揺らす。
「あ、ごめん。驚かせちゃった?」
「…別に」
そっけなく言い、早足に去ろうとするその背に、僕は声を掛けた。
「人探しなら、リノさんかエレノアに聞いた方が早いよ? 僕でもいいけれど」
「なっ!?」
あれ。なんだか予想外の過剰反応。
ぽかんとする僕に、テッドが慌てたように詰め寄ってきた。
「おま…なんで、それを…!」
「まわりの人の顔、見てたから」
興味ないようなフリをして、伺うように。でもしっかりと、顔を確認していたから。
答える僕に、何かを言おうと口を開き――結局、テッドは言葉を発する事無くくるりと背を向けた。
「――忘れろ」
去り際、ぽつりと呟かれた言葉。
追求を拒む響きに…溜め息を一つ付いた。
(意地っぱりだなぁ)
意固地になった子どもは放置に限る。
いずれ話してくれるかな…などと、まず叶いそうにない希望を飲み込み、僕は再び見回りを再開した。
【了】
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
数年前、携帯サイトの拍手にて御礼文として公開。
無論テッドが探していたのはルバロ(坊)です。おぼろげながら覚えているテッドは、ダメ元で船内を彷徨っていたのデシタ。
放置したシエルは優しさなんだかメンドーだったのか諦めだったのか…果たしてどちらでしょうw