「なあ、ルバロ。外出しないか?」
「しない」
即答し、今度は何秒かなと六回目のカウントを開始する。
「なあ、ルバロ。外出しないか?」
「…十秒」
またカウントが短くなった。最初は一分、次が五十秒、四十秒、三十秒…。
はあ…。
僕は溜め息一つ付き、読んでいた本を閉じた。
「お? 読書終わりか?」
白々しい。だいたい何、その笑顔。
「…外出って? どこ行くの」
「バザーが開かれてるんだよ、今日。行ってみようぜ! な!」
「人込み嫌い」
「行こうぜ、な、一生のお願いだからさ!」
「君の一生、いくつあるのさ」
毎度の台詞に、呆れたように見やれば満面の笑顔。
「ほらほら、日が暮れちまう! さっさと行こうぜ、ルバロ!」
「あーはいはい」
仕方なく、僕は立ち上がり外出の準備をする。
毎回毎回、同じような会話。よく飽きないものだよ全く。
…それは僕もか。
結果が同じなら、メンドーな経過は避けた方が無難…だよな。
よし。次はさっさと付き合ってさっさと帰ろう。
「ルバロー! まだかよー!」
「今行くよ」
結論は出た。後は実行するだけ。
明日のテッドの反応が楽しみだ。
そんな事を考えながら、僕はテッドを追って部屋を出た。
【了】
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
数十年前、携帯サイトの拍手にて御礼文として公開。
幻想水滸伝1から少しだけ過去の話。
テッドと…たぶんルバロにとっても至福の時だったであろう日常のヒトコマ。