――晴れの日は、あまり好きじゃない。
「ルックーっ!」
…またか。
広間に響き渡った、毎度の声。僕は不機嫌に眉間に皺を寄せる。
ちらり、と視線を動かせば、両手を大きく振りながら大股で駆け寄ってくる軍主の姿。
何故あんな無駄な言動が多いのだろうか。
疑問を胸中で呟き小さく溜め息を吐く。
「ねえ、ルックも行こうよ!」
目的地も言わず、いきなりソレ?
頭悪過ぎ。もう少し知能を上げてほしいものだよ。
「どこへ、何しに」
短く問い掛ける僕に、マオは満面の笑顔で答える。
「トランに、ルバロさんを迎えに!」
「絶対にイヤ」
冗談ではない。
僕は元々、ヒトと関わり合いになりたくないんだ。その中でも、ルバロは特に関わりたくない。
なのに、何が楽しくて、自分からルバロに関わりに行かなきゃならないのさ。
「そんな事言わないでさ、せっかくこんないい天気なんだもん、ピクニックだと思ってどう?」
…こいつ、今が戦時中だと理解しているんだろうか…。
ふとそんな事を思う。
「…いい天気だから、何なのさ…」
無意識に出た呟きに、マオが間の抜けた顔をした。
「え? 何って、何が?」
疑問に対し疑問で返すのは会話としておかしい。いや、その前に、今のは独り言で、別に答えがほしかったものではない。
「別になんでもないよ」
「ダメだよ、ルック。疑問に思った事はちゃんと理解出来るまで聞かなくちゃ」
そんな正論ぽい事を君に言われるなんて、気分悪くなるね。
「天気がいいから外に行くって理屈、わけがわからないんだけど」
言わなきゃ、言うまでまとわりつかれそうな気がした。
仕方なく、無駄と思いながら疑問を口にしてみる。
その問いに、マオはあっさりと
「お天気いいと外で思いっきり体動かすの気持ちイイでしょ!」
と言った。
ますますワケがわからなかった。
「必要だから、外に行くんだろう。天気なんて関係ない。用事もないのに外に出るなんて、時間と体力の無駄じゃないか」
「ああ、ルックは体力ないもんね!」
「余計なお世話。切り裂くよ」
笑顔で言い放つマオに、一瞬本気で切り裂きを見舞ってやろうかと考える。
「あのさ。なんでもかんでも『理屈』付けなきゃ行動しちゃダメなの?」
「…は?」
いきなりのコトバに、不意を突かれた。
「本読んで『知』ったとしても、実際に経験してみなきゃ『理解』は出来ないんじゃない?」
言いながら、勝手に僕の手を取り歩きだす。
逆らう事無く歩き出す、自分の足。しかし、止まる気は起きなかった。
「たまにはお日サマの光、浴びないとね!」
――笑う君の顔に、太陽の陽が重なった気がした。
晴れの日は、あまり好きじゃない。
――でも…。
たまには、悪くない…かも、しれない。
【了】
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
知識として知ってはいても実際理解はしていない。だから、すぐ理屈付けようとするのかな。